ANYONE BUT T
本書は、非常にストレートなタイトル、メタリックな黒のブックデザイン、ショッキングピンクとゴールドのポップな英語フォント。レイアウトだけ見ると、UFOや宇宙人に関するもっともらしい噂を並べた普通の本に見えますが、出版社が紀伊国屋書店(※)なので安心してください。この出版社が、こんなとんでもない内容の本を出版するとは考えにくいです。
そして本書は、世界最高の科学者たちがそれぞれの専門性を駆使し、あらゆる観点から地球外生命に関する最新の知見を紹介する、実に贅沢な一冊です。
代表著者を務める英国科学協会会長ジム・アル・カリリ氏をはじめ、天文学、天体物理学、生化学、遺伝学、神経科学、心理学などの専門家を含むトップ20名の著者陣の顔ぶれは、それだけでも圧倒的です。
簡単に言うと、人類の地球外生命に関する思想史から始まり、UFO目撃史とその心理学的考察へと進んでいきます。人類とは全く異なる知性とは?火星に生命が繁栄する可能性、太陽系に生命が生き残る可能性とは?フィクションに描かれたエイリアンの形態史とその科学的考察を経て、ついに生命現象そのものの科学に辿り着く(この部分は後述の「生命は創れるか?」と内容が重なっていて興味深い。2冊を読み比べてみるのも楽しい)。
話はさらに進み、SETI(地球外知的生命体探査計画)の第一線研究者による宇宙探査の最先端がわかりやすく紹介される。文章自体は非常に平易で分かりやすい。各章は独立しているが、実は有機的に関連し合い、一体となって迫力ある読書体験を生み出している。
余談だが、本書のページを左手でめくると、UFOが地球に飛来し、再び飛び立つ様子が垣間見える(いわゆるパラパラ漫画)。これは紙の本ならではの楽しい機能であり、電子書籍ではできないことです(少なくとも現時点では)。
*なんといっても、この本にはドーキンスの「利己的な遺伝子」を発行している出版社であります。ドーキンスは真の無神論者であり、「神は妄想である」というタイトルの本を出版して宗教的な人々を論破するほどですが、宇宙人の存在についてはどう考えているのでしょうか。