安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説

藤巻一保

陰陽師・安倍晴明。陰陽道の開祖として崇められ、天文学や地理学の名人、比類なき式神や呪術の使い手であった。

盗賊、盗賊、鬼、疫病神。平安京の優雅な宮殿から一歩外に出れば、いつでもこの世やあの夜の鬼が徘徊している。そんな時代に「生きた」男。本書の著者・藤巻一穂は、名著『安倍晴明』(学研刊)で安倍晴明を紹介している。

ご存知の通り、晴明は今では役行者や弘法大師空海と並ぶカリスマ呪術師として讃えられている。しかし、著者によれば、役行者、空海、晴明の違いは、前者2人が「修行で得た独自の呪力や神仏との密約によって呪力を行使した」のに対し、晴明は「常人には読み取れない時空の特性を読み取って呪力を行使した」という点にあるという。

つまり、安倍晴明の本質は「暦」の秘密を掴むことにあった。「暦」とは、「神や魔が、ある時にどこにどのように動いているのか、どんな働きをしているのか、人間界にどう干渉しているのか」を知るための根拠となる図表に過ぎない。

本書は、晴明の秘伝の核心である秘伝書『六硯内伝』を全文丹念に翻訳し、暦の読み方を徹底解説した労作である。性質上、現代語訳だけでは一般の読者には理解しにくい内容ですが、ご心配なく。本文の現代語訳のあとに、丁寧で詳しい解説が続きます。(実は、この解説が本書の大部分を占めています。)

これを読めば、安倍晴明の陰陽道がどのようなものなのかがよく分かります。本書は、かつて学研から「安倍晴明占術全集」として出版されていましたが、今回、「第5巻 本文 宿曜経」という章を追加して再出版されました。

陰陽道は現在では単に占術として知られていますが、その起源である「暦」が、文字通り歴史に影響を与えてきたことを本書は解説しています。

安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説