隠された「ダビデの星」東寺曼荼羅と平城京外京

石川雅晟

日本人とユダヤ人が共通の祖先を持つという説、いわゆる「日本ユ同祖論」は、明治時代からさまざまな論者によって唱えられ、オカルト好きにはおなじみかもしれないが、一般的には異端の歴史観とされている。

著者は前著『古事記の中のユダヤ人 平安京に隠されたダビデの星』でこの説に取り組み、「渡来した秦氏はユダヤのルーツを持ち、ネストリウス派を信仰していた」「古事記と旧約聖書には多くの類似点がある」「平安京にダビデの星が隠されている」などの仮説を提唱した。

本書はこれらの仮説をさらに発展させ、ユダヤ日本人共通祖先説の観点から古代から平安時代までの日本史の謎を問い直す試みである。

本書の主題は、かつて多くの移民が移住した関東地方に多く見られるユダヤ地名の謎である。空海は当時世界有数の国際都市であった唐の長安でネストリウス派と接触したとされ、彼が建立した東寺の立体曼荼羅に隠されたダビデの星、またかつて日本の実質的支配者であった藤原氏とユダヤ人との関係などについて論じている。

ネストリウス派は5世紀のエフェソス公会議で異端とされヨーロッパから追放された古代キリスト教の一派で、その後ペルシア帝国を経て中央アジアから唐に広まった。したがって、長安で接触した空海がその思想に影響を受けたとしても不思議ではない。

著者は長年ビジネス界に身を置き、定年後はこれらのテーマに真剣に取り組んでいるフリーの研究者。文中ではたびたび「素人」と自らを呼んでいるが、これらの問題に挑むことを決意したのは「神の恵み」のためだと述べている。つまり著者自身が「死体」となり、「本当にこの文章を書いているのだろうか」と半ば無意識の状態で「神」の言葉を書き綴ったのである。

本書のタイトル「隠されたダビデの星」は、哲学者梅原猛の名著「隠された十字架」にちなんでいるという。機会があれば、両書を読み比べてみるのも読書の楽しみの一つだろう。

隠された「ダビデの星」東寺曼荼羅と平城京外京